VOID構文規定に基づく違反対応について(愚痴)
記録開始:午前2時14分 場所:VOID No.6裏口付近(防犯ホログラム稼働せず)
………………はぁ。
まただ。
VOIDの連中は、毎度毎度「これジョークなんで」とか言って構文を実行しやがる。
昨日なんて、「行政手続きの申請書の“余白”に記憶を挿入する裏技」とか言い出した。
おまえらのジョークが本当に行政文書に影響を与え始めてることに気づけ。
「主任〜これ見てください!
藤本先生の占い構文で、記憶が焼けたんですよ〜!
超かっこよくないですか?“忘れるは恋のはじまり”ってやつ!」……そうか。君はまず、火の始末を覚えろ。
しかも、藤本はまたいない。
VOID奥のバーカウンターには、誰かの上着と木蘭ペンギンの置きメモだけ。
──“主任、また叱る気? でも来てくれてうれしかった。”
わかっててやってる。
全員、わかっててやってるんだよな。
業務報告
- VOID No.6にて、非合法構文士3名の申告漏れ記憶を発見 → 臨時検閲完了
- 「記憶を食うアルゴリズム」騒動 → 当該AIは停止処分、再稼働には主任の署名必要(断る)
- 藤本薫の所在確認 → 不在。匂いは残っていた(ラベンダーと、焼けた記憶)
備考
VOIDが“事件”にならないのは、
俺が、ここでギリギリのラインを踏みとどまらせてるからだ。
誰も言わないけど。
誰も知らないけど。
……誰も、俺のこと見てないけど。
記録終了:午前3時08分