VOIDの階段で拾った“自分の名札”
依頼者は若い男性。
VOIDを探索中、見覚えのある名札を拾ったという。
裏には「君はここにいた」と書かれていた。
けれど、その施設にも、時間にも、彼にその記憶はない。
藤本:「記憶って場所に“設置”されることあるよ。
人が忘れても、VOIDの床が覚えてる」
香坂:「施設じゃなくて、記憶の地形か」
藤本:「そう。ここは構文士の墓場でもある」
🐧木蘭ペンギン:
【VOID階段:無断侵入】
【記憶に自分の名前を貼ると、回収不能になります】
【主任、拾い物やめて】
名札は解体し、構文構造を取り出して依頼者に返却。
訳文には「あなたがこの場に“いたかどうか”は問われていません」と記した。
📝主任日誌
第218昼──「VOID構文で書かれた“許可証”」
依頼者は学生風の女性。
VOIDで拾った紙に「通過許可証」と書かれていた。
だが、VOIDにそのような認証システムは存在しない(はず)。
香坂:「これは……誰が出した許可証?」
依頼者:「わかりません。でもこれを持ってたら、“誰かに許された気がした”んです」
藤本:「感情が発行する“承認構文”ってやつだな」
🐧木蘭ペンギン:
【VOIDに“通行証”など存在しない】
【存在するのは、“通りたい”という意思】
【主任、また勝手に共感してる】
構文解析の結果、手書きの揺らぎが強く、
実質“自己許可”であると判断。
文末に、「これは“あなたが許したかった人の記録”です」と付記。