レポレッロが来た。
「ちょっと通りがかりでね」と言いながら、古びたフラッシュメモリを香坂の机に置いた。


中に入っていたのは、誰かがVOIDで出力したまま放置していた短い詩。
名前も著者も記録もなく、ただ美しく、冷たかった。


レポレッロ:「これ、誰が書いたのか分からないけど、
たぶん“書いた時点で全部失くしてた”やつだな」
藤本:「じゃあ残ってるのは、形じゃなくて、熱だけってこと?」
レポレッロ:「そう、焚き火の残り香。
……で、これいくらになる?」

🐧木蘭ペンギン:

【記憶詩:売買不可】
【主任、勝手に市場に出さないで】
【レポレッロが嗅いだら、もう価値落ちてる】


香坂はその詩を“主観者不在構文”として記録し、
誰にも読まれないように封をした。
レポレッロは去り際に「じゃ、あとはよろしく」とだけ言い、窓の外に消えた。

カテゴリー: 主任日誌