VOID経由で、木蘭国際法務研究所に回ってきた案件。
依頼者は、数年前に急逝した“元恋人”のLINEのスクショを持っていた。
「最後に届いたこの言葉、“何も意味がない”って言ってたけど、
本当にそうだったのか、ずっと気になってるんです」
内容は、たった一言。
「ごめん。じゃあね。」
彼女はこの言葉に、何年も縛られていた。
スクショを削除できず、読み返しては記憶が濁る。
でも「消す勇気」も「保存する意味」も、どちらもなかった。
そこで、私は構文士として「記憶の再構成」を提案した。
“翻訳”ではなく、“供養”。
ただ、これは私ひとりでは荷が重い。
昼下がり。
VOID奥にある供養室にて──
玄慧(げんけい)にデータを渡した。
坊主頭に丸サングラス。
💀ニコちゃんマークのタブレットを叩きながら、ぼそり。
「死者の言葉を掘るってのは、ヤバいぞ主任。
お前が自分の記憶で“上書き”したら、それはもう亡霊だ」
「いいんだ、それでも。依頼者が“手放したい”って言ってるなら、
誰かが“責任持って形にして”供養しないといけない」
彼はLINEのスクショを、
「本当はこう言いたかったのではないか」という構文に再編集した。
「ごめん。じゃあね。」
↓
「本当は、ずっと話したかった。けどもう、話せる気がしなかった。
だから、これが限界だった。バイバイ。」
クライアントには、そのまま渡さず、
筆文字で記した“書”として納品した。
依頼者は静かに頭を下げ、「ありがとうございました」と言った。
彼女の目に涙はなかった。
🌒夜、木蘭に戻ると──
藤本が椅子の上でぐだぐだに丸まって、
ストローで何か吸ってた(匂封銀器だった)。
「あーあ。意味をつけちゃったか。
君も業が深いねぇ、主任」
「じゃあ、お前はどう供養するんだよ」
「俺はしないよ。“何も意味がなかった”って言葉そのままの方が、
生きてる奴らが苦しむだろ? だから残す」
こいつだけは供養される側だと思う。
🐧木蘭ペンギンのホログラムが、
またも冷笑コメントをボードに浮かべた。
【構文供養:料金外】
【坊主と主任の自主サービス】
【夜の構文士、また人の気持ちで遊ぶ】…ちな、そのLINEスクショ、バックアップ済み(マジで)