推薦状──誰にも渡す予定のない
午前10時17分、文書添削依頼。
内容は「推薦状」。
だが、宛先は空欄。日付も未記入。受取人の指定もなかった。
「どこかに提出する予定は?」
「ありません。
もし“推薦してくれる人がいるとしたら”、
どんな文章になったかを見てみたくて」
内容はすでに完成していた。
筆致は客観的で冷静。
だが、何度も“努力”という単語が出てきていた。
香坂は、過剰な部分だけを抑えて整えた。
木蘭ペンギンがプリント後の紙をじっと見ていた。
ホログラム表示はなかった。
その後、ペンギンは背を向けたまま部屋の隅に移動し、
しばらく動かなかった。
📎備考:
“この推薦状が誰にも渡らなくても、
その人は確かに“誰かに認められたかった”んだと思う。”