ラーメンは誰が作っているのか?
午後1時43分、申請相談。
入管からの通知:補足説明求む
内容:「調理は誰が行っているか?」
──質問は単純だ。だが、答えは単純ではない。
「夫が味を決め、妻が動き、2人で支えてます」
現実として、それは真実だ。
でも制度の前では、それは“誰が作ってるか曖昧な状態”にしか見えない。
「妻の調理行為は資格外活動の範囲内である」。
それは事実だ。でも、どこかで俺は──その文言が虚しいと思っていた。
「私、毎日やってるわけじゃないです。でも、あの人がスープ失敗すると、悔しいんです」
そう言ったときの顔は、労働者じゃなくて、伴侶だった。
入管が何を見ているか、俺にはよくわかる。
だからこそ、このスープの熱さをどう書くかに、時間をかけた。
事実を曲げるわけじゃない。
でも、彼女がただ“鍋をかき混ぜてた”わけじゃないことは、俺がわかってる。
記録終了:午後1時54分
備考:
“この国は、スープの味で在留を決めたりはしない。
でも、誰と作ったかは、本当は少しだけ見るべきなんだ。”