朝から冷える。
暖房の音が、事務所では一番大きかった。
クライアントの声を一件、非公開に回す。
内容に問題はない。
ただ、読後に残る違和感が強すぎた。
「勝てました」
「条件はすべて満たしました」
「でも、前より眠れなくなりました」
声は正直すぎると、扱いに困る。
午後、木蘭についての噂がまた増えていた。
「黒い事務所」
「人の記憶をいじる」
「構文士が裏で操っている」
藤本はそれを聞いて笑った。
「操れたら楽なんだけどね」
私は、噂が間違っているとは思わない。
ただ、正確でもない。
構文士とは、誤解される役割だ。
理解されないことを前提にしている。
それでも言葉を扱う以上、逃げるわけにはいかない。
夕方、ペンギンのホログラムが一瞬だけ点いた。
理由は不明。
🐧 Yes, but… 噂は事実より長く生きる。