依頼者は、明確な迫害を証明するだけの書類を持たなかった。
事情聴取の際にも、言葉を選びすぎている印象があった。
藤本は、面談中にこう言った。
「──君さ、母親に“行ってきなさい”って言われて逃げてきただろ」
その瞬間、依頼者は泣いた。
申請理由の“政治的迫害”ではなく、“家族の事情”を話し始めた。
香坂としては、法的には受け入れがたい主張。
だが、「命の危険」という枠において、それはまさに“境界”の記憶だった。
🐧Yes, but…
その申請書の裏に、メモが鉛筆で書かれていた。
「Mama says I am safer here. I just want to live.」