依頼者は、10年以上日本に在留していた。
全ての要件を満たし、年収も安定しており、地域との関わりも深かった。
だが、「なぜ今、永住を?」と訊いたときの沈黙が妙だった。
藤本は、黙って依頼者の手を取って言った。
「──君、ここに“置き去りにされた側”なんだろ」
依頼者は一瞬だけ笑い、
「……今なら、そう言ってもいいかもしれません」と答えた。
🐧Yes, but…
提出された理由書の一節。
「私は、これ以上、誰かの都合で動かされないために、ここに永住します」
記録としては十分──だが、どこか遺言めいていた。