色彩感覚に関する相談だった。
依頼者は、昔は青が好きだったが、最近なぜか“赤”ばかり選んでしまう、と。

藤本は、手を握りながらこう言った。
「──青を“冷たい”って思うようになった日があったんじゃない?」

その瞬間、依頼者の指先が震えた。
本人は思い出せないと言ったが、瞳の奥が少し濁った。

Yes, but…
その翌週、依頼者は髪を“黒”に染めて来た。
青も赤も、記憶のフィルターだったのかもしれない。

カテゴリー: 主任日誌