お父さんの会社に未来はあるか?

投稿者: 香坂湊 投稿日:

午後3時12分、木蘭応接室。

申請種別:「経営・管理」ビザ。

申請人:大学在学中の息子。

経営主体:父親。

申請理由書の一文が印象的だった。

「父の背中を見て育ちました。今度は私が、その背中に並びたいと思っています。」

──言葉としては、綺麗だ。

でも、それは「経営」じゃなくて、まだ“願い”なんだ。

入管の判定は冷静だった。

  • 実質的な業務権限は父親に集中
  • 決裁権限や資金調達は父主導
  • 息子の役割は「手伝い」と「将来的な参画意思」

だから結果は、不許可。

経営している“証拠”より、“誰が今動かしているのか”が問われた。

「俺、何が足りなかったんでしょうか……」

若い声で、そう訊かれた。

その時、俺は一瞬──答えに詰まった。

彼の目には、父の会社を“自分の未来”として見ている光があった。

でも、それはまだ“経営”ではない。

そして制度は、“今、誰が主語か”しか見ない。

その後の対応:

  • 父の実績と会社の信頼性は申し分なし
  • 申請者本人の「業務分掌の独立性」強化が必要
  • 将来的に、在学中の活動計画と現実的関与を明文化して、再申請を検討

記録終了:午後4時01分

備考:

“背中に並ぶには、まず“自分の足で立つ”ことが要る。”

カテゴリー: 主任日誌